やはり晄は晄だ。

私は不特定多数の中のお気に入りであって、他の何でもない。多少無理言ってでも私と一緒にいたいって、そんな気分だったんだ。




きっと、そうで。

私はその会話に聞く耳も持たないくらいに気分が下がりまくっていた。



「嫌よ!嫌!」

「んー。面倒臭い子は嫌いかなー」

「…っ、」

「ね…分かんない?帰って?」



こんなのどうだっていい。

面倒臭いのは私の方だ。

寧ろ晄は私へと気を向けることなくそのままこの女と仲良ししてればよかったのにって、そんなことを思ってしまう。


私って嫌な女だ。

私を選んでくれて嬉しいはずなのに、こんなに胸がモヤついて。




「……もういいっ!」





かなり気が乗っていない私は風を切るようにして走り去る女のことを、ろくに見ることもなかった。