BLADE BEAST

「…売ってなくて、なに?」

「…もういい」

「なんで?」

「からかうから、ムカツく」



甘いミルクティーを口に含む私はとぼけやがる眞紘に軽く睨みをきかす。

けれど同じように烏龍茶を飲んでいる眞紘は、眉をピクリとも動かさずに私を見下ろしていた。

そして言うのだ。



「まぁ、からかってるけど」

「…っ、アンタね」




「莉央のこと。───からかいたい」




反応しづらくなるようなことを。


ギシッ…とソファーを軋ませて、グラス片手に私を覗き込んでくる眞紘は、澄んだ低い声を発した。

涼しげな瞳の奥には何やら深い色が見えた。

飲んでいるミルクティーと比例するように甘いホワイトムスクは、もしかしたら世界をぼやかすような変な効果を発するのかも。