「まだ熱いから、ゆっくり寝て」
ホワイトムスクが漂う中、薄暗い部屋で私はまだベッドの横に立ち膝をついていた。
「寝たら、勿体無い」
「…なんでよ」
「莉央が、折角…ここに」
「…」
「俺のとこに、いるのに…」
また、うわ言のように。
次第にカサカサと布団から手を出した眞紘はベッドの上に添えられていた私の手を握っていた。
ゆらゆらと切なげにも見える瞳。眞紘の手は尋常じゃなく熱かった。
再びの無言。息苦しそうな眞紘の吐息の中で、私は一個言ってみようかと思った。
少し引っかかっていた、あのことを。
「ねぇ、眞紘」
この前の海でのこと。

