さっきまで私など気にもせずに女と絡み合っていた男がだ。

はたから見たら何を調子のいいことをやってんだって話なんだろうけれど、私はそれで全然良くて。

ふと思い出して来てくれたのなら、いい。

その時に私を私として心配して、気にかけて、愛してくれれば、それでいいんだ。




「もう大丈夫」

「…うん」

「俺が来たから、大丈夫」




付け直したのか、フゼアの香りがする。

いや、それと同じくらいに強い女物の香水が混じっていたけれど、特には気にはしない。

だから、正面から抱き締めてくる晄にふと、手を回そうとした……、



「………ありが、………あっ、」



────けれど、また思い出した。



「ん?」と尋ねてくる晄から思い立ったかのように腕を下ろした私は、先ほど歩いてきた方角を真っ直ぐ見たまま立ち上がる。

あれからどのくらい経った?

アイツは……眞紘は、もしかしたら心配ってやつをしてるかもしれない。