光の差す暗闇で私は音を奏でたい




この綺麗な旋律が私は好きだ。





気持ちよくゆったりと弾いていると、いつの間にか小林君が起きていた。





「……起きたんだ。よく寝ていたね。もう夜だよ」





そう言って小林君の方を見ると、彼は何故か驚いていた。





「……どうしたの?そんなに驚いた表情をして」





「……あぁ、ちょっと幸音の普通の姿久しぶりに見たからびっくりした」





「……そういう事ね」





私はいつも学校では、三つ編みと伊達メガネをかけているから……髪を下ろして、メガネを外している姿を近くで見るのは、小林君にとっては初めてだからだ。





それに、と言って小林君は話し続ける。




「今、幸音が弾いていた曲の音色がすげぇ綺麗だったから」





「……この曲も、そういう旋律で作られているからだよ」




「そうだけど……でも、今日は一段と幸音のピアノは優しかった。それはきっと、幸音がピアノに込めた思いが綺麗だったから」




「……そっか」



今起きたばかりのはずなのに、もう脳が普通に動き出しているのが、すごいと思った。





こんな数分の間で、小林君はそんな事まで考えられるんだ。





「今の曲、ノクターンだよな?日本語で夜想曲と呼ばれている」





「そうだよ。夜に弾くにはピッタリの曲だから弾いていたの。それに、この曲はショパンが妻のために書いたと言われている。……そういうのって私、素敵だなって思うの」







「……そうだな。幸音は今、そういう奴いるのか?」






「……いると思う?」





私は立ち上がって、窓から見える夜空を見上げる。





「俺は……何となく今もいるのかと思った」




「……そっか」





確かに、私には前からずっと思っている人がいる。




……だけどそれは多分、恋愛とかそういう綺麗なものではないと思う。