「……お兄さんの家族の事は、あえて聞かない。もし、どこにも行く宛てがないのなら、私の家に来る?」
「……は?」
「一から全部リセットして、やり直してみたいと思わない?」
彼女の言葉に、俺は動揺した。
「もちろん、ずっと私の家にいなくてもいい。貴方がやりたい事見つかったのなら、いつだって出て行ってもらって構わない。だけど、住む場所がないと何も出来ないでしょ?」
俺は、その言葉を聞いて黙り込む。
「……お兄さんは、どうしたい?」
……彼女は、何で他人の俺にこんなに良くしてくれるんだ?俺には理解出来ない。
本当に中学生か?……でも、俺は……。
「俺は、変わりたい。誰かを守れるくらいに、強くなりたい」
そう言うと、彼女はニッコリ笑った。
「よく出来ました」
彼女は俺の頭を撫でて、手を引っ張り俺を立たせる。
「じゃあ、行こう」
彼女は俺の手を引いて車に連れていってくれた。
「お嬢様!何事かと思えば、そちらの方は何方です?」
「今日から私の家で住ませることにしたの」
「また勝手な事を……」
「いいの!今のあの家の主導権は私よ。何をしたって私の自由なの。……それに、一人はもう飽きたわ」
……こいつはご令嬢だったのか。なのにも関わらず、一般人の俺を引っ張ってくるなんて変わった奴だ。
……でも、こいつはただのご令嬢なんかじゃない。
「そういえば、お兄さん名前なんて言うの?」
「……井上、遥貴」
「そうなんだ。私は如月幸音。これからよろしくね、遥貴さん」
彼女はニッコリして俺に言う。その笑顔が、一瞬何故か少し花恋と重なって見えた。
……花恋、俺は花恋の分まで幸せに過ごしてやるよ。だからどうか、違う世界にいても笑っていてくれよ。
……俺はその日から、そう誓った。

