光の差す暗闇で私は音を奏でたい




「お兄さん、分かりやすいね。今何でって思ったでしょ?」





「……何でわかるんだよ」





俺は基本、無表情だから分かりやすいと言われたのは初めてだった。




「お兄さんが、今にも死にそうな顔してたから。……ねぇ、お兄さんは死にたくなるほど辛い事があったのかもしれない。でも、私にはきっとその全てを分かってあげることは出来ないと思う」




でも、と言って彼女は傘を強く握る。




「……ずっとそういう風にしていて、お兄さんの大切な人は、安心出来ると思う?」



俺にそう問いかけて、彼女は鞄から取り出した手紙を渡してくる。




……その筆跡に、俺は見覚えがあった。





後ろを見ると、そこには谷口花恋と書いてあった。





「……何でお前がこれを……」



「お兄さんの大事な人が亡くなった日、私も病院にいたの。そしたら、お兄さんが涙を流しながら走ってきて……。その時にお兄さんが床に落として行ったから」




……思い出した。あの時、花恋の母親から手紙を貰っていた。でも、その時はあまりにもショックが大きすぎて忘れていた。



「実はね……私もあの日、お父様が亡くなったの」




その言葉に俺は驚き、彼女の方を見た。




「私も、たくさんの涙を流した。辛かったし、悲しかったけれど……それ以上に、お父様の分までちゃんと生きなきゃって思ったの」




彼女は真っ直ぐ俺を見る。




「そんな時、貴方とすれ違った。追いかけようと思ったけれど……結局、出来なかった。だからこうして今、お兄さんと会えて良かった」



「……俺も。この手紙、ありがとな。ちゃんと持ってくれていて」





そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。