光の差す暗闇で私は音を奏でたい



久しぶりに会えたのに、その内容はただの説教だった。



今のお母様は、私のことを”如月幸音”としてではなく”ピアニスト”としてしか見ていない。




……私は、お母様には逆らえない。



お母様にとって私は、ピアノ業界で話す一つの駒でしかないから……私の意思なんて、通用しない。




だから、何としてでも来月のコンクールを成功させなければいけない。




私はスカートをギュッと握り締める。





……まだ、逃げ出したくない。





絶対、お母様が驚くような、そんな演奏をしてみせる。



私はその時、固く決意した。









……部屋に戻った私は、自分の部屋にある楽譜本を一つずつ取り出してペラペラとめくる。




……今の自分にピッタリな曲が見つからない。どれも明るい曲ばかりで、私には合わない。




楽譜を持ったまま、ベッドに寝転がる。コンクールに出るようになった頃の私は、ピアノを弾くのがすごく楽しかった。




友達もたくさんいて、私がピアノを弾いていると周りの人から囲まれて幸せだった。





……幸せだったのに、中学ではピアノをやっているせいで周囲の人から悪口を言われるようになり、虐められ……


そして、いつの間にか一人になっていた。




ピアノを弾くことは、私にとって大事なことで本当は大好きなはずなのに、過去に縛られているせいか、自分の奏でるピアノに自信が持てなくなった。




……こんな私は今、何を弾けばいいのだろう。



コンコンコン


ドアをノックする音が聞こえて、思わず身体を起こす。



「お嬢様、今入っても大丈夫でしょうか?」




「どうぞ」




そう言うと、遥貴さんが部屋に入ってきた。




「いつもの紅茶と茶菓子お持ちしました」





「わざわざありがとう」




「いえ。こちらに置いておきますね」



「うん」