そう言って、少年は自分の書いた絵を次々に見せてくれた。
 彼の絵は自由だった。風景画もあれば人物画、食べ物や想像画もあった。

 元の世界でいえば中学生に上がる前、10歳未満の子どもだろう。
 その少年はホープという名だと教えてくれた。彼はサラサラの灰色の髪に少し日に焼けた肌、そして垂れ目が印象的な子で小柄な体系だった。そして、丁寧な口調で穏やかな性格をしていた。


 「ホープ。俺達はそろそろ町に戻ろうと思うんだ。君も一緒に帰らないかい?飛べばあっという間だよ」
 「空を飛んでみたいんですけど…。でも、もう少しここで絵を描いてから帰ります。この絵を完成させたいんです」
 「君を怖がらせるわけではないけど、実は少し先に魔物がいてね。だから、君のところへ来たんだ。ここは町から離れすぎている。少しだけ距離を移動しないと危ないだろう」
 「え、魔物……」


 すっかり怯えてしまったホープだったが、やはり絵を描きたいのか迷った様子で持っている絵を見つめる。そんな彼を見てしまうと、申し訳なくなってしまう。彼にとって、この時間は何よりも楽しい時間なのだとわかる。けれど、身の危険は避けなければいけない。ホープからはほとんど魔力を感じない。おさらく、火をつけたり、物を避けたりする程度の簡単な魔法しか使えないだろう。魔物が出たら自分を守る手段はないだろう。


 「それなら、完成するまでここに居るわ」
 「あぁ。そうだな、それがいい」
 「え、でもラファエル様達は帰るって………」
 「今日はデートなんだ。デートのプランは2人で決めるものだからね。たった今、ホープと一緒に居ようと2人で決めたんだ。だから、ゆっくり絵を描くといいよ」