「はい。見つかった例の隠れ家に動きがありました。後をつけて、現在尾行しておりますが、いかがいたしますか?」
 「せっかく見つけた場所だ。警備隊に連絡して、現場で抑えてくれ。隠れ家は見つかっていないと思わせて行動してくれ」
 「かしこまりました」


 そう言うと、リトは一礼した後にすぐに立ち去ろうとする。それをラファエルは名前を呼んで止めた。


 「リト。食事の前の一件は、これの仕事が成功した際には免除してやる。これならは、彼女の前であんな事を話すんではない」
 「……王子は優しすぎます。もっと厳しい罰を与えなければ、他の城の者を同じような事をしますよ」
 「そんな事は俺がさせないさ。それに……
…」

 ラファエルは視線を静かな寝室の方へと向ける。

 「シュリは大丈夫だ。そう思ってる」
 「……何それ、親バカみたいー」
 「親じゃない、婚約者だ」


 ラファエルの周りをぐるぐると周りながら嫌みを言うアレイを、ラファエルは手で押し止める。


 「俺も確認に行く。すぐに出るぞ」
 「……いえ、ラファエル様はお戻りください。さすがに、婚約した日の夜に抜けるのはまずいです」
 「すぐに終わらせて戻ればいいだろう」
 「気づかれますよ。それにシュリ様は気づかなくても、彼女の使いが気づき怒るでしょうね」
 「………ダメだ。俺は確認したいこともあるので行くぞ。いつもより早く飛ぶ。ついてこい」
 「もうー、妖精使い荒いよ!」


 ブツブツと言いながらも、ラファエルの肩に乗ったアレイは、魔法で彼の洋服を変える。いつしかと同じ真っ黒な服装だ。


 「助かる、アレイ。では、行くぞ」


 ラファエルとリトは、窓を開け飛び降りると、そのまま地面に落ちる、が下にトランポリンでも引いてあったかのように、地面を蹴るとそのまま前方方向へ向かいながら高く飛んだ。もちろん、魔法の力だ。
 その後はラファエルは空を飛び、リトはそれを追いかけるように地面を走り、目的の場所へと向かった。

 夜明けまであと4時間ほど。
 ラファエルは、城を振り返る事なく夜道を駆け抜けた。