「ラファエルさん、やっぱり別々に……」
 「ダメだ。それに、さん付けじゃなくて、呼び捨て」
 「ラ、ラファエル………」
 「約束は約束だ。君に手を出すことはしない。我慢する。だから、これだけは許して」
 「わかってる、わかってるけど」


 柔らかく大きなベットに入り、ラファエルは体に羽のように軽い真っ白な布をかけてくれる。そして、その中でラファエルが朱栞の体を抱きしめてくる。
 頬に彼の胸が当たる。鍛えられた体に温かい体温、朱栞は恥ずかしさで言葉が出なくなってしまう。


 「どうした?そんなに嫌だったか?」
 「恥ずかしいの………」
 「そうか、ならいい」
 「よくないよ」
 「いいさ。少しずつ慣れていけばいい。慣れないで恥ずかしがるシュリも可愛いけどな」


 そう言って笑うラファエルの体の振動が伝わってくる。
 彼だけは余裕そうだな、と悔しくなる。
 

 「おやすみ、シュリ」
 「お、おやすみなさい」


 本当にこのまま寝るの?と、不安になったのは少しの間だった。
 やはり、彼は朱栞に安心を与えてくれる。
 起きている時だけではない。こうやって抱きしめ合って寝ようとしているときも、彼の安らかな振動と呼吸が、朱栞の緊張した体をゆっくりとほぐしていくのだ。

 どうしてこんなにすぐに慣れてしまうの?と、思った頃には朱栞はいつの間にか夢の中に落ちていた。




 「やっと、やっとおまえとこの手で閉じ込められた」




 そんな心の底からの深い呟きは、朱栞の耳には入らずにラファエルの独り言として闇に消えたのだった。