メイナの話を聞いて、どうして裏でこそこそと言われているのか、ようやく理由がわかった。
 そして、ハーフフェアリを汚らわしい者だと見ているから、あの蔑んだ視線を向けていたのだと納得出来た。

 妖精はここではとても大切にされている、神聖なものなのだろう。それを人間と結ばれた事で生まれたハーフエルフ。けれど、シュリは異世界人だ。どうして、そんな突然変異の存在に転生してしまったのかはわからない。
 けれど、その血が王族であるラファエルと結ばれることで、今後のその血が混じるのを恐れているのだろう。混血の血が。


 「ですが、その話をしているのは城の者や王族関係者だけなので、一般の人達はそんな事は感じてはいないはずです。むしろ、魔力が強く、貴重なハーフフェアリが王子と結ばれるのは喜ばしいと祝福してくれるはずです。……そして、私も、そう思っております」
 「どうして……」
 「私もあなた様が初めていらっしゃった時はラファエル様とはふさわしくないと思っておりました。ラファエル様はどうしてこんなにも丁重に扱い、大切になさるのかわかりませんでした。ですが、シュリ様と過ごしていくうちに、あなた様の人柄がとても素晴らしく、いつからはお使いするのが楽しくなっていました。物語を愛するあなたは、物語の主人公のようなお姫様にふさわしいと思っております。だから、どうぞ自信をもって今日の婚約の報告を行ってください。私も微力ながらお手伝いさせていただきます」
 「………メイナ、ありがとう」
 「シュリ様、ご婚約おめでとうございます」


 メイナは、深々と頭を下げて、そして顔を上げる頃に満面の笑みを浮かべていた。
 彼女に認めて貰えた、祝福してもらえた。それ、とても嬉しいことだった。
 けれど、これが契約で渋々受けたものだとは到底彼女に伝えられるものではなかった。


 朱栞が、婚約する時間はもうすぐになっていた。
 ラファエルがこちらに向かってくる気配を感じ、朱栞は気を引き締めたのだった。