「え、食べっちゃった……」

 驚きのあまりに声を出してしまった。が、その後に体に変化が訪れた。
 急に体の力が抜け、朱栞はラファエルの指に体を倒した。朱栞が、視線だけ彼に向けると彼の体から今まで以上の魔力を感じた。そして、ゆっくりと瞼を開けた彼の瞳が真っ白、いや、銀色に光っていた。朱栞の羽から出る光りと全く同じ色をしている。彼の中に自分の魔力が取り込まれたのだろう。

 しばらくすると、朱栞の体も普段通りに戻り、ラファエルの瞳の色も戻っていた。


 「………終わりだよ。シュリ、大丈夫だったかな?」
 「はい。急に力が抜けた時はびっくりしましたが、今は大丈夫です」
 「契約する時に大量の力が必要みたいだからね。でも、無事に終わってよかったよ」


 ラファエルがそう微笑み終わりを告げると、彼の周りをぐるぐると飛び回る妖精が現れた。


 「あぁ、来てくれたのか。同じ契約妖精同士、挨拶をしたいのかな」
 「え・・・あなたは、私を見つけてくれた」


 ラファエルの肩に飛び乗り、足を組んでこちらを強い視線で見つめる妖精。
 それは、朱栞がこの世界の来たばかりの時に、1番初めに草原で出会った妖精だった。金色の髪に、トンボのような羽。つり目の瞳は宝石のようにキラキラと輝き、自らが光を放っているようだった。

 「俺の契約妖精のアレイだよ。小さい頃からの仲間なんだ。アレイ、新しい契約妖精であり、婚約者のシュリだ。仲良くしてくれ」
 「い・や・よっ!」


 フンッ!と顔を背けたアレイ。
 どうやら初めて会った妖精は朱栞の事を気に入ってはくれていなかった。

 前途多難だな、と朱栞は心の中でため息をついたのだった。