ラファエルは、長い指を2つ立てた後に、人差し指だけを立てる。


 「1つは、君と妖精の契約を結びたい。僕の妖精になって欲しい。君の魔力は膨大だ。使い方を制御しなければ危険がある。そして、一般人に使われる事も恐れている。そのために、君と契約を結びたい。もちろん、俺が自由に魔力を使えるようにはならないから安心していいよ。君が納得した時に魔法を使ってくれればいい。その代わりに、君には異世界人に渡している以上の報酬を渡すよ。そして城に住んでくれて構わないし、君にこの国の知識や言葉、そして魔法の使い方などを教えると約束しよう」
 「異世界からきた人には、何を与えているんですか?」
 「家や仕事、そして暮らしていくには十分なほどの報酬を半年に1度渡しているよ。私たちがこの異世界に連れてきたのだ。それぐらいの援助はさせてもらわなければいけないからね」
 「………その契約は、断れないのよね?」
 「断られるつもりはなかったかな……。君は異世界人。異世界人は、違った過去で妖精を滅ぼしたと言われている。だから、妖精は異世界人が嫌いなんだ。故に危険が及ぶこともある。それからも守りたいしね。君を守るためにも、この契約は悪い事ではないと思うんだ」


 断るという考えを持っていると思わなかったのか、ラファエルはとても悲しげな視線で朱栞を見ながらそう言った。
 彼が朱栞のために結ぶ契約だというのはよくわかる。だが、1度疑ってしまうと、慎重になってしまう。味方は自分だけなのだから。

 けれど、ここで断ってしまえば、一人で暮らしていく事になるのだろう。王は異世界人に報酬を渡していると言っていた。となれば、穂純の情報を知っている可能性は高いのだ。今はラファエルの傍にいた方がいい。
 この国の言葉や生き抜くための知恵を知ってから、彼から離れればいいだろう。そう考えたのだ。


 「………わかりました。好きに私の魔力を使わないというならば」
 「もちろんだよ。では妖精の契約を結ぶのは決まりだ。では、残りの1つだ。その契約内容の前にシュリに聞きたい事があるんだ」
 「なんですか?」
 「君は、昔に来た異世界人で誰を探しているんだい?」


 予想外の質問に、朱栞は驚き瞳を大きくした。
 ラファエルはもう気づいていたのだ。
 朱栞が誰かを探そうとしている事に。