図書館や物語などが出来ても、何の役にも立たない。
 そう思っている人もまだ多く、カーネリアがやっている事に疑問をもつ城の者も多かった。
 せっかくの魔力なのだから、警備隊などに入ればいいのに、と思う人間もいた。けれど、本が売れ始め、周りの人々から「感動して泣いた」「いい話だった」「本を読むのは楽しい時間だ」と勧められて手に取る者も多く、カーネリアを認め始める人も増えて来ていた。
 カーネリア自身は、まだまだだと思っているが、やはり認められるのは嬉しいものだ。
 城の中や、城下町を歩けば「素敵な物語をありがとうございます」と、声をかけられるのだ。もっと、頑張らなければ、と思う。

 家に帰るというホープに手を振り見送りながら、カーネリアは発売したばかりの本をギュっと抱きしめる。
 本により、人々の感情が豊かになって欲しい。それが、何かしらで影響を与えてくれるとカーネリアは思っていた。それが、自分を守り続けてくれたラファエルの恩返しになるだろうと、考えるようになっていた。

 「もっと、頑張らなきゃ。シャレブレ国のために」
 「君は頑張りすぎだと思うな」
 「わっ、ラファエルっ!びっくりした」

 突然、後ろから抱きしめられ、耳元で愛しい彼の声が聞こえ。カーネリアは悲鳴に似た声を上げてしまう。彼はわざと囁く声を耳の近くで発したので、カーネリアは真っ赤になってしまった。

 「せっかく密売組織も壊滅させたし、君の片思いだった相手もいなくなったのに、君は俺を放っておきすぎだ」
 「そんな事はないは。ただ本の出版があったからわたわたしただけで」
 「結婚を後回しにしたのに?」
 「う………、だからそれは申し訳ないと思ってるわ」