「どうして、お母さんが死んじゃうの?お母さんは頑張ってたのに。ずっとずっとお仕事頑張ってたのに。何で………」


 カーネリアは大声を出して泣き、ボロボロの涙を流した。ラファエルが小さな体を抱きしめると、その胸に向かって彼女は拳で叩いてくる。全く痛くはない。けれど、彼女は悔しさをラファエルの向かってぶつけてきた。カーネリアの気が済むなら拳ではなく、魔法で自分をボロボロにしてもかまわない。ラファエルはそんな風にさえ思った。そんなもので、彼女の傷が癒えるはずがないのはわかっているのだ。
 彼女や母親を助けられず、彼女の悲しみさえ癒せない。自分は本当に王子なのか。無力感を感じながら、抱きしめる事しか出来ないラファエルは悔しさと怒りが込み上げてくる。


 「カーネリア。必ず君を守る。君だけは、俺が守ろう、それは約束する」


 ラファエルはカーネリアの頬にそっと指を添えて、涙を拭きとる。
 そして、怒りを抑えて微笑みながら彼女の顔を覗き込む。
 すると、カーネリアは「本当に……?」と目を赤くしながら、震える声で聞き返してくる。
 カーネリアは、普通の妖精よりも格段に魔力が高かった。母親であるセフィーには叶わないものの、国王の契約妖精と同じぐらいかもしれない。子どもでこの魔力量だと考えると、大人になるころにはシャレブレ国で1番の妖精になる可能性もあった。
 そうなれば、彼女を狙う者は多いだろう。それはシャレブレ国内外、そして敵味方関係なくだ。そのため彼女を守らなければいけない。ラファエルは、そう心に決めていた。


 「もう、怖い事はない?」
 「あぁ。ないと誓おう」
 「ラファエルがずっと一緒に居てくれるから?」
 「そうだな。ずっと一緒だ……」
 「じゃあ、もう泣かない。ずっと泣いていてはダメだとお母さんなら言うと思うから」
 「泣きたい時はないてもいいんだ。それが今日なのだと俺は思う」
 「うん。ラファエルが一緒なら泣いてもいいよね」
 「そうだな」