「え、どうして………。まだ、戻っていないの……」
 「君の体は、もう昼夜で変化する事はないようだね」
 「どういう事?」
 「君は元は妖精と人間の間に生まれた子どもだ。だから、ハーフフェアリ。そして、君の母親である妖精は、とても魔力が大きく強かった。だから、ハーフの君もその力は母親ほどではないにしろ、大きくなったんだ。魔力をうまく制御できるようになったら、きっと人間の姿にはならないだろうと思っていたけど。やはり、その考えは正解だったね」
 「まって、………どういう事?私は、ここに転移してきたって……。それに母って……」


 ラファエルの突然の言葉に、朱栞は状況が飲み込めない。

 自分が妖精と人間のハーフ。

 そして、彼はそれを昔から知っていたような口ぶりだった。

 朱栞は焦りと不安に襲われた。
 自分の知らない事がまだあるのだ。朱栞は、彼を見上げる。その表情はきっと、だらしがないほどに不安げだっただろう。そんな朱栞にラファエルはゆっくりと近づき、抱きしめてくれる。

 「ごめん。君には話さなければいけない事がたくさんあるんだ。今まで黙っていた事を謝りたい。そして、どうしてこんな事になってしまったのかを、説明させてくれないかな」


 ラファエルは「君の体調がいいのならば」と付け足したが、朱栞は「大丈夫だから、聞かせて」とすぐに返事をした。


 ラファエルは、ゆっくりと頷くと、朱栞の座っていたベットの隣に移動した、朱栞を抱き寄せながらゆっくりと話しを始めた。


 「どこから話せばいいのかな。そうだな、やはり昔の話をしよう。懐かしい、話だよ」


 そう言って目を細めて微笑みながらラファエルは思い出を振り返り語ってくれた。
 その話は、夢のように信じがたくも、妙に懐かしく、そして彼の愛と強さに溢れた話であった。