部屋は薄暗くなり、もう少しで夕陽が沈みそうになっていた。1日を寝てしまったようだったが、そのおかげで大分体が軽くなっていた。
 だが、ラファエルは自分の体の事などどうでもよかった。目を覚ましたら、「おはよう」と声を掛けてくれるはずの愛しい彼女の姿がどこにも見当たらないのだ。練る前に、ここに居ると約束してくれたのに、彼女はいないのだ。部屋にタイプライターがない。寝ている自分の邪魔にならないように、と部屋で作業をしているのだろうか。ラファエルは、すぐに着替えをすると部屋を出てシュリの部屋へと向かった。
 途中、部下に「安静にしていてください」と、止められたがそれを無視して、ラファエルは彼女に会いに向かった。
 妙な胸騒ぎがした。
 それが勘違いだと早く確認したかったのだ。
 シュリの姿を見て安心したい。だから、自分の名前を呼んで、微笑みかけて欲しい。


 「シュリっ!!」


 ロックもせずに、扉を開ける。
 が、そこには闇があるだけで、灯りもなければシュリの姿もなかった。


 「メイナっ。メイナはどこにいる?!」


 大声でシュリの専属のメイドを呼ぶ。魔法を使ったので、城中にその声は響いただろう。すると、パタパタと軽い足取りでこちらに向かってくる音が近づいてきた。メイナだ。