ラファエルはそう言って、指で頭を撫でてくれる。
 それは嬉しいけれど、やはり手で包まれるように頭を撫でて欲しいと思ってしまう。ハーフフェアリだから、彼は大切にしてくれるとわかっている。けれど、やはりラファエルよりも小さい体では感じられないぬくもりを感じたいと思ってしまうのだ。


 「シュリが悲しんで、怒っているのに、俺は嬉しいと思ってしまうよ」
 「え……」
 「シュリ。君は俺が少しは好きになってくれた?そんなに心配してくれるぐらいに、大切な存在になっているのかな?」


 ラファエルはそう言って、申し訳なさそうな表情をしながらも口元は微笑んでいる。
 自分は意を決して彼に気持ちを伝えたのに、それを反省をした途端にそんな風に笑うなんて。少し悔しい気もするが、それでも彼が笑っていてくれるのならば、そう感じてしまう時点で朱栞の気持ちはもう決まっているのだ。


 朱栞はラファエルに「目を瞑ってくれたら、教える」と伝えると、彼は「君の顔を見て聞きたいけど、そういう可愛い事言われたら、言う事を聞かなきゃいけなくなるね」と、何故か嬉しそうに笑って、ゆっくりと目を閉じた。

 長い睫毛は彼の目元に落ちる。
 朱栞はジッとそれ見つめた。整った顔というのは、目を瞑っていてもきれいだなと彼の寝顔を見ていつも思っていた。
 朱栞はふわりと飛び、彼の目の前に浮かぶ。

 そして、少しの恥ずかしさを感じながらも彼に近づく。ラファエルがしっかりと目を瞑っている事を確認した後、ラファエルの頬に小さく口づけた。きっと彼にとっては人間の小指を当てられたぐらいの小さな感触だっただろう。
 けれど、ラファエルは驚いた様子で目を見開いて朱栞を見ていた。

 「こういう事、したいと思うぐらいにはラファエルが好きになってます」


 ずっと大切だった人が悪い事をしていたから、別の人に乗り換えた。そう思われたくはない、彼との暮らしを考えるようになってから自分の気持ちに気づいたのだと知って欲しい。

 けれど、今は自分の顔以上に真っ赤になっている彼の顔を見れただけでも十分だ、と思った。
 しばらくの間、珍しく余裕のない彼の様子を眺めていたかった。