「あいつは何も話してないのか。まぁ、あんな事があったのだ……話す事もないか」
 「………恐れながら、国王様。穂純には何があったのでしょうか。手を焼いている、というのは一体……」
 「ラファエルも負傷したのだ、少しだけ私から話そう。後は、直接王子から聞いてくれ」
 「はい………」


 そう言うと、国王の表情は厳しいものに変わった。

 「この国の一番の問題は何だと思う?」
 「え……」


 朱栞はシャレブレ国の暮らしを思い出してみて、何か問題でもあるのだろうか、と疑問に思った。妖精との共存を選んだため自然豊かであるし、皆が平和に暮らしているようにも見える。仕事を持っている人もいるが、魔法のおかげで過度な作業はないとラファエルも話していた。以前にラファエルと話していた「戦争もないと聞いていましたので、伝染病などの病気への対応でしょうか?それとも、暮らしの向上ですか?」と自分の考えを伝えた。だが、王ははっきりと「違う」と否定した。そして、ゆっくりと思い唇を開いた。


 「シャレブレでは、妖精の密売が1番の問題になっている」
 「妖精の密売。まさか、それに……」
 「そうだ。セクーナという男が関与している事がわかったんだ」


 ブルッと体の体温が一気に下がった気がした。
 そして、あたりがグラグラと地震のように揺れているような感覚に襲われた。けれど、何とか持ちこたえてその場に立ち続けた。が、きっと表情は焦りを隠せなかっただろう。