黒い花




私が席に着くと、伊月先生はHRを終わらせて教室を出て行った。


いよいよ授業を受けるのか。

慣れない、自分に似合わない場所に居るせいか、どこかボーッとした頭でいると、ふとクラスがざわめきだすのが分かる。

……あぁ、これは話しかけられたりするやつ───と思った瞬間に


「…ねぇねぇ!花城さんっ!」

私に向かって声が飛んできた。


「転入テストに合格するなんて本当に凄い!!
私、琴吹 杏珠(ことぶきあんず)!よろしくね!!」

勢い良く、興奮気味にそう続けて言ってきたのは、前の席に座るお下げの女の子。

大きな瞳を輝かせて私の方を見つめている。


………面倒。
どれだけキラキラオーラを出されても、思いつく感想はそれだけ。

このまま放置してもいいが、1年同じクラスで過ごす以上、最低限コミニュケーションは取らねばならない。

それだったら、どう返事をしようか。と少し考えていたら、私の考えがまとまるより先に…


「───ほらほら、困ってるじゃないか。杏珠、落ち着いて。」

隣から、さっきも聞いた爽やかな声が彼女を止めた。