黒い花




「…さて、詳しいお話はまた後でするとして、着きました。ここがSクラスです。」

そうして、説明を受けながら辿り着いた私の通うことになる教室。

やはりSクラスだからなのか、一般生徒の教室とハッキリ区分されていて、教室の中からも気配はあっても話し声はあまり聞こえない。

「私は先に中に入るので、呼んだら入って来てくださいね。」

さらりとそう言い、教室の中に姿を消した伊月先生。

廊下に一人になり、しんと静まっている空気に時が止まったように感じた。


……まさか、私にこんな学校に来る日が来るなんて。

私は誰なんだろう。という気さえするほど、私は今第三者の視点で、自分のことを知らない誰かとして捉えている。

でも……────


「花城さん、どうぞ。」

慣れない教室の扉に手を掛け、軽い力で開いたその向こうへ足を踏み入れる。

私が伊月先生の隣…教壇の前に立つと、息を呑んだ私より低い位置からの視線を感じる。

もちろん、それに動じる筈もない。

私は、

「はじめまして。花城あまねです。」



私は、今*花城あまね*としてそこに存在するまで。