「まず、矢白高校は普通の進学校とは少し違っています。」
普通とは…ね。
何となくそんな感じはする。
私が次の言葉を待っていたら、伊月先生は足を止め私の方を振り返った。
「特別クラスがあるんです。」
「……特別?」
意味ありげにそう言われ、私は思わず聞き返す。
「ただ勉学に秀でてるだけでなく、家柄や容姿、身体能力など、人として総合的に優れた人達の集うクラスです。」
なるほど。
"圧倒的完璧"を生み出そうとしているのか。
これは、まだまだ裏がありそう。
…そんなことを思いつつも、これは本当に他人事だと思った。
だって裏の力しかない私には、そこそこの学習能力と人を殺す技術しかなくて。
家柄なんてない、容姿だって穢れてる。
……ほら、何一つ当てはまらないから。
───でも。
伊月先生の含みのある言い方、私の見つめる眼差し。
それは……
「そして、花城さん。」
「───あなたは特別クラス…通称Sクラスの生徒になります。」
その言葉のためのものだと、分かった。

