目的地に辿り着くと同時に、案内してくれた彼は踵を返してすぐに元来た道を戻り始めた。
ほんと、ぶっきらぼう。
「…ありがとうございました。」
でも、案内してくれて助かったのは事実だし、遠ざかろうとしている背中に向けてお礼を言う。
彼の反応はなく、聞こえたのかどうかと思うけど…距離と私の声量的には届いているだろう。
だけど、あの気配の無さと圧は本当に気味が悪いから、関わるのはこれきりに願いたい。
そこで彼のことは終了させ、目の前の校長室を改めて見つめ直す。
…ライ様の部屋と同じくらいの大きな扉。
だけど、私の見慣れた夜に潜むような黒色ではなく、初めて来た場所なのに何故か親しみを感じられるようなチョコレート色をしている。
それだけで、全く印象が違うものだ。
私はひと呼吸おき、自分が"花城あまね"だということを再確認してから扉を叩いた。

