4月最初の 金曜日。


中野駅の 改札口を出ると

笑顔で 手を振る頼太が 見えた。


頼太って 案外 カッコいいなぁ。

身長が高いから 目立つし。


小さく 手を振り返して 

頼太に 駆け寄りながら。


毅彦が 変な事 言うから。

頼太のこと 意識しちゃうじゃない。


「お待たせ。」

「ううん。こっちだよ。」


そっと 私の背をおして。

頼太。エスコートも 上手じゃない!


中野通りは 桜のトンネルが 満開で。

少しレトロな 提灯に ライトアップされている。


「わぁ。綺麗。」

「今が 満開だね。」

「ホント。武道館の回りも 見事だよ。会社から 見えるけど。」

「桜って いいよね。」


「へぇ。頼太が そんなこと言うの 意外。」

「そうか? 俺 ロマンチックだよ。」


頼太は 少し照れた顔で 私を見る。

頼太の照れた顔に ドキッとしてしまい。


いつもみたいに 笑い飛ばせなくて。


甘い沈黙に 包まれたまま。


「ここだよ。」


頼太は ぎこちなく笑って 

イタリアンレストランの 扉を開けた。