夜になると 弟の友達が 3人訪ねてきて。

賑やかな 年越しになった。


「エーッ! 嘘! あの頼太君?」

「『さやかー。麦茶!』って。俺 失礼な奴でしたよね?」


すっかり 大人になった 野球少年たち。


ウチは 中学校に近く 寄道に ぴったりで。

部活の帰りに みんなが 立ち寄っていた。


『さやか。麦茶』って 私に 麦茶を求めた 頼太。


一番チビで ヤンチャな 少年だったのに。


「すっかり 大人になったじゃない。びっくりした。」

「あれから 10年近く 経ちますからね。」


「フフッ。敬語も 上手になったね。」

「沙耶香…さん? 俺も 一応 社会人ですから。」

「沙耶香でいいわよ。今更。」


「頼太も 東京で 就職したんだよ。」

弟に言われて 私は 頼太を見る。


「沙耶香さんも 東京ですよね?」

「そうよ。会社は 九段下。頼太は?」


「俺の会社は 新宿です。」

「へぇ。どこに住んでるの?」

「中野です。」


「ウッソ! 私 野方だよ。中野のどの辺?」

「中野坂上です。近いですね。」

「本当。じゃ 丸の内線? 私 東西線だから。会わなかったんだね。」


私と頼太は 東京の話しで 盛り上がり。


「連絡先 教えてもらって いいですか? なんかあった時のために。」

「いいよ。そのうち ご飯でも 食べようか? せっかく近くに 住んでるんだから。」


この時は ただの社交辞令だった。


ただの 弟の友達だから。


まさか 本当に 頼太から 連絡が来ると

私は 思っていなかった。