ランチは 中華街で。

元町を歩いて おしゃれなカフェで 休んで。


こんなデート 初めてだね。


普通の恋人達なら 当たり前のデートでも。


「沙耶香 お正月は 実家帰るの?」

「そうだね。お正月くらい 帰らないと。」


「沙耶香って あんまり実家に 帰らないよね? 近いのに。」

「帰っても 落ち着かないの。私の部屋は 納戸みたいになってるし。」


「ハハハッ。家出て 長いもんな。仕方ないよ。」


「最近は お正月しか 帰ってないなぁ。客間に寝るの 嫌だから。」


「ご両親 心配してるんじゃない?」


「どうかな…? たまに電話は してるから。元気なら いいんじゃない?」

「そう? 寂しがってない?」


「弟は ずっと実家にいるし。姉は 結婚して 近くに住んでいるから。大丈夫よ。」


「へぇ。じゃ 沙耶香だけ 離れているんだ。」


「そう。私 小さい頃から 変わってる子だったの。姉弟の中で。」

「えー? そうなの?」


「うん。1人で 本ばっかり読んでて。愛想がないって よく言われたなぁ。」

「へぇ。何か 意外。」


「フフッ。今はね、少しは 愛想笑いも できるようになったから。」


他愛ない話しでも 2人なら 楽しくて。


毅彦は 私に クリスマスプレゼントと言って

金のブレスレットを 買ってくれた。


「ありがとう。嬉しい!」


儚げな 細いチェーンが 手首を上下して。


「色々 我慢させて ごめんね。」


私の手首を 見つめながら 毅彦が言うから。


このままでいいって 思ってしまうじゃない。


不自由で 寂しくて 罪悪感だらけでも…