観覧車を 降りて ゆっくり 歩いて。

毅彦が 向かったのは 赤レンガ倉庫。


クリスマス用に ディスプレイされた 倉庫街は

まだお昼前なのに たくさんの人が 歩いている。


倉庫の中の ショップを 少し覗いて。

外にでると 大きな クリスマスツリーが 目に留まる。


「わぁ~。すごい!」

毅彦の手を離して 私は 駆け出す。


ツリーの回りは 写真を撮る 恋人達で いっぱいで。


私達は 写真を残すことも できないから。

ただ ぼんやりと ツリーを 見つめる。


「灯りが 点くと もっと綺麗だろうなぁ。」

私の隣で そっと 肩を抱きながら 毅彦は言う。

「うん…」


でも 点灯する時間まで いることは できないね。


大丈夫だよ。最初から わかってたことだもん。


私に 毅彦を責める気持ちは 全然ないけど。

多分 毅彦は 自分を責めている。


「ねぇ。すぐそこ 海だね。行ってみようよ。」

黙って ツリーをみている毅彦の 手を取って。


私は 海に向かって 歩き出す。


「今日は 暖かいね。風もないし。」


休日のデートに 通勤スタイルの私達。

手を繋いでいても ちょっと 不自然で。


私達 回りから 浮いて見えるね。


いけないことを しているから 仕方ないけど。


カジュアルな装いで 雰囲気を合わせた 恋人達が

顔を寄せ合って 写真を撮る様子を 羨ましく思い。


でも、今 毅彦を失ったら 寂しくて…


もう少しだけ 一緒にいたい。


今のままで いいから…