翌朝、私は食堂に行った。
誰も私を見ない。まるで私が存在していないみたいに。
「お義姉様、お体は大丈夫ですか?夕べはいらっしゃらなかったんで心配してたんですよ」
黒い髪と目をした少女が慈愛に満ちた目で私を見る。
彼女はリーズナ。
私の義妹で私とは違って正統な公爵家の血を継ぐもの。
「リーズナ、そんな奴の心配をする必要はない」
長兄エヴァンが鋭い目で私を射抜く。
次兄のノルウェンは無言で食事を続ける。
「あら、お兄様。半分とは言え血の繋がった姉を心配するのは当然よ」
にっこりと私に微笑むリーズナ。
でも私は知ってるよ。
優しいのは表向きだけ。
心の中で私を嫌悪し、見下していることも。
まだ馬鹿正直に私を嫌いだと態度に出す長兄の方がマシだ。
もしくは義父や義母みたいにいないものとして扱ってくれた方がいい。
以前なら義父や実母に気に入られようと必死だった。
意味もなく私に優しくしてくるリーズナが怖くて反発もしていた。
その結果があの悲惨な末路だ。
「ありがとう、リーズナ。少し食欲がなかったの。もう大丈夫よ」
私がそう言って微笑むとリーズナは固まった。
エヴァンはからんとスプーンを落とし、私を凝視する。
ノルウェンは無表情だけど私の方を見ている。
義父や義母、それに使用人たちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
私がリーズナに痛烈な一言を投げかけると思っていたのだろう。
そして、リーズナは私の言葉に傷ついたとばかりに顔を歪める。
それを見た義兄たちは私を罵り、義父からの評価は下がり、使用人たちから更に嫌われ、軽んじられる。
それが今までの流れだ。
でも今回の人生ではそうはいかない。
リーズナ、あんたの思い通りになんて絶対にいかないから。
私は誰よりも理性的にあなたに接してあげる。
「そ、そう」
リーズナはすぐに気を取り直したけど顔が引きつっている。まだまだ子供ね。
そう言う私も見目は子供だけど。
でも中身は子供じゃないわ。だからこんなことだってできるのよ。
私は悲し気に目を伏せる。
「でも、悲しかったわ。私が食堂に来なくても誰も様子を見に来てはくれなかったんだもの」
「っ」
リーズナは顔を青ざめさせた。
「何で俺たちが貴様の様子なんぞを見にいかないといけないんだ」
「‥…」
エヴァンは嫌そうに顔を歪め、怒鳴り散らす。ノルウェンは無言だ。
義父と義母は目を逸らし、我関せずといった感じだ。子供の喧嘩に親はできないというスタンスなのだろうか。
「リーズナもそうなの?」
「えっ、いえ、私は」
本音なんて言えないわよね。
あなたは優しくて慈悲深い。みんなに愛される子としてずっとそのキャラできたんだもの。
私を初めから嫌い、暴言を吐くエヴァンとも私を侮蔑の眼差しで見つめるノルウェンとも違う。あなただけが私に優しく接していた。少なくとも表向きは。そんなリーズナを使用人達は褒め称える。
ねぇ、あなたの本性を知ったらあなたの信者である使用人達はどんな反応するでしょうね。それでもあなたのことを素敵だと言ってついて来てくれるかしら。
食堂に居る使用人たちも少しざわつき出した。
リーズナが様子を見に行かなかったことに疑問を思っているようだ。
「ご、ごめんなさい。もし気分が悪いのだったら下手に訪ねに言っても悪いかなって思って」
苦しい言い訳ね。
「そう。気遣ってくれてありがとう。体調を崩しているかもしれない私に食事すら運んでこなかった使用人たちとは違うわね」
次は使用人達がぎくりと顔を強張らせた。
そんなに警戒しなくても大丈夫よ。今日はその辺にしておいてあげるから。
「私はこれで失礼しますわね」
誰も私を見ない。まるで私が存在していないみたいに。
「お義姉様、お体は大丈夫ですか?夕べはいらっしゃらなかったんで心配してたんですよ」
黒い髪と目をした少女が慈愛に満ちた目で私を見る。
彼女はリーズナ。
私の義妹で私とは違って正統な公爵家の血を継ぐもの。
「リーズナ、そんな奴の心配をする必要はない」
長兄エヴァンが鋭い目で私を射抜く。
次兄のノルウェンは無言で食事を続ける。
「あら、お兄様。半分とは言え血の繋がった姉を心配するのは当然よ」
にっこりと私に微笑むリーズナ。
でも私は知ってるよ。
優しいのは表向きだけ。
心の中で私を嫌悪し、見下していることも。
まだ馬鹿正直に私を嫌いだと態度に出す長兄の方がマシだ。
もしくは義父や義母みたいにいないものとして扱ってくれた方がいい。
以前なら義父や実母に気に入られようと必死だった。
意味もなく私に優しくしてくるリーズナが怖くて反発もしていた。
その結果があの悲惨な末路だ。
「ありがとう、リーズナ。少し食欲がなかったの。もう大丈夫よ」
私がそう言って微笑むとリーズナは固まった。
エヴァンはからんとスプーンを落とし、私を凝視する。
ノルウェンは無表情だけど私の方を見ている。
義父や義母、それに使用人たちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
私がリーズナに痛烈な一言を投げかけると思っていたのだろう。
そして、リーズナは私の言葉に傷ついたとばかりに顔を歪める。
それを見た義兄たちは私を罵り、義父からの評価は下がり、使用人たちから更に嫌われ、軽んじられる。
それが今までの流れだ。
でも今回の人生ではそうはいかない。
リーズナ、あんたの思い通りになんて絶対にいかないから。
私は誰よりも理性的にあなたに接してあげる。
「そ、そう」
リーズナはすぐに気を取り直したけど顔が引きつっている。まだまだ子供ね。
そう言う私も見目は子供だけど。
でも中身は子供じゃないわ。だからこんなことだってできるのよ。
私は悲し気に目を伏せる。
「でも、悲しかったわ。私が食堂に来なくても誰も様子を見に来てはくれなかったんだもの」
「っ」
リーズナは顔を青ざめさせた。
「何で俺たちが貴様の様子なんぞを見にいかないといけないんだ」
「‥…」
エヴァンは嫌そうに顔を歪め、怒鳴り散らす。ノルウェンは無言だ。
義父と義母は目を逸らし、我関せずといった感じだ。子供の喧嘩に親はできないというスタンスなのだろうか。
「リーズナもそうなの?」
「えっ、いえ、私は」
本音なんて言えないわよね。
あなたは優しくて慈悲深い。みんなに愛される子としてずっとそのキャラできたんだもの。
私を初めから嫌い、暴言を吐くエヴァンとも私を侮蔑の眼差しで見つめるノルウェンとも違う。あなただけが私に優しく接していた。少なくとも表向きは。そんなリーズナを使用人達は褒め称える。
ねぇ、あなたの本性を知ったらあなたの信者である使用人達はどんな反応するでしょうね。それでもあなたのことを素敵だと言ってついて来てくれるかしら。
食堂に居る使用人たちも少しざわつき出した。
リーズナが様子を見に行かなかったことに疑問を思っているようだ。
「ご、ごめんなさい。もし気分が悪いのだったら下手に訪ねに言っても悪いかなって思って」
苦しい言い訳ね。
「そう。気遣ってくれてありがとう。体調を崩しているかもしれない私に食事すら運んでこなかった使用人たちとは違うわね」
次は使用人達がぎくりと顔を強張らせた。
そんなに警戒しなくても大丈夫よ。今日はその辺にしておいてあげるから。
「私はこれで失礼しますわね」