「そう、ですか?」
「七瀬、自転車だっけ?」
「いえ、歩き、です」
「俺自転車だから、じゃあ後ろな」
「……後ろ」
後ろ……?
って、まさか!
「そうだ、西沢さんにLIMEしといてね。七瀬のこと心配してたから」
「ハイ……」
手はさりげなく離されたけど、そのまま縦に並んで廊下を歩く。
向かう先は、玄関。
なんかすごくおかしなことになっている気がするのは……気のせい?
「靴替えてくる」
「はい……」
3年生の靴箱に向かう先輩を見送ったあと、私も上履きを脱いで履き替える。
待って。
靴は、履き替えるけど……待って、ほんとに一緒に帰るの?
え、本当に?
「……」
ドキドキするのは、風邪のせいじゃない。
やだ、どうしよう、なんで……
なんで私、こんなにドキドキ───
「七瀬ー」
「……っ」
呼びに来た先輩が、外へ出るドアの前で待っている。
ドキドキしながら進む足が、少しだけ震える。
なんで……どうして。
先輩、彼女いるんでしょ?


