「………」
「………」
後ろに立ったまま、瞬先輩が動かない。
いつもはよく喋る先輩が、どうしてか全然喋ってくれなくて……
機械の音だけが、無性に大きく聞こえる。
声が聞こえないと、喉が詰まりそうで……
息が、苦しくなってくる。
だから。
なにか喋ろう、そう思ったとき。
先に口を開いたのは、後ろに立っている瞬先輩のほうだった。
「七瀬さー、もしかして約束してた?」
「え?」
振り向いて見えた先輩の顔は、なんだか申し訳なさそうだ。
「誕生日。“章くん”と会う約束してた?」
どうしてそんなことを聞くのか、わからないけど。
約束なんて、誰ともしていない。
「もし約束あるんなら、そっち優先していいから」
「……」
「討論会は一応生徒会全員参加だけど……でも高校生活での誕生日なんて3回しかないわけじゃん?貴重なその1回を、行きたくもない集まりなんかに使うことねぇよ」
「あの、」
「先に約束してたなら尚更。“章くん”との青春なんて、今しかないんだから。それに俺らはさ、七瀬いなくても全然どうにかなるから」
え………。
全然、どうにか……


