「そうだ、瞬先輩」
私の斜め前で、机に頬をくっつけてぐったりしている瞬先輩を呼んだら。
少しだけ顔を上げるように、先輩の目が私を見た。
「んー?」
「あの、今日の朝……すいませんでした」
「朝?」
「章くんが、なんか変なこと言い出して……」
「あー……」
「章くんのこと、怒ってますか?」
「……」
「……」
「七瀬ー」
「はい!」
「ぶはっ!いい返事」
笑いながら完全に顔を上げた先輩の手が、斜め前の私のほうに伸びてきて……
その手が触れたのは、私の目の前に置いてある、完成したばかりの生徒会通信。
それを取り上げるように、通信は瞬先輩の元へ移動した。
「友達なの?“章くん”は、七瀬にとって」
「はい、中学のときから仲がいい友達です」
「ふーん」
生徒会通信に目を通しながら話す先輩とは、目が合わないのに……
声は……全部が私に向かってくるから。
いつ視線が上がって目が合うかって……ドキドキする。


