「昨日、あずに会ったんだって?」
「あず?」
「髪の短い女の先輩」
あ……瞬先輩の、彼女。
「七瀬のこと可愛い可愛いすっげぇうるせぇの」
「え」
「それだけで2時間も電話付き合わされてさー」
電話……
そっか。彼女と彼氏は、家に帰ったあとも繋がっていられるんだ。
電話、できるんだ……
「今度七瀬のことちゃんと紹介しろってうるさくて、」
瞬先輩が楽しそうに言ったとき、隣の章くんが、私の腕をグイっと引っ張った。
見上げた先の章くんは、私の腕を掴んだまま瞬先輩を睨むように見ていて……
「章く、」
「邪魔しないでくれます?」
章くんの低い声が……瞬先輩に向けられた。
「今俺と美香、大事な話してるんで」
「………」
「つーかどこの誰にいい人アピール振り撒こうが勝手ですけど、こいつのこと構うのはやめてください」
「ちょ、章くんっ」
「行こ」
「え、ちょっと!?」
ガシッと掴まれた腕は引っ張られ、そのまま先輩から遠ざけられるように連行されてしまった。


