涙で濡れるぐちゃぐちゃな顔で、何度も何度も頷いた。


何度も何度も頷く私に、先輩が昔みたいに笑ってる。





ねぇ、もしかしたら今、私は立っているんじゃないかな。



あの約束の日、夢見ていたそんな未来に。



色々なことがあったけど、



たくさんの涙を流したけど、



私たちの道は、一度は枝分かれしてしまったけれど。



だけど今、人生という長い長いその道が、再びひとつに重なったから。



振り返れば後悔なんて、ひとつもないんじゃないかな。





ねぇ先輩、覚えていますか。



恋なんて知らなかった私が、生まれて初めて恋をした高校生のあの日々を。



先輩のことばかりを考えて、先輩のことばかりを追いかけて。



2人で入った多目的室で、隠れてキスをしたあの日のことを。



泣いて、壊れて、叫んで、苦しくて。



それでも信じていたあの日のことを。



夢みたいに儚かった幸せも、胸が張り裂けるほどの痛みも、



その全てがこんなに幸せな今に繋がっていたのなら、




ねぇ、先輩。




やっぱり私は、後悔なんてひとつもないよ。






「春田美香、か。結構いい感じじゃね?」

「……恥ずかしい」

「ははっ」







そしてここから何年、何十年。


その道の先にも変わらない2人がいることは……




きっとこの先、先輩が必ず証明してくれるはず。





いつかきっと、どこかで。








*おわり*
→あとがき