適わない。
いちかさんはそう言ったけど、人の気持ちなんて量ることはできない。
誰の想いも本物で、誰の想いも1番で、とても大切なものだって…
こんな光景を見るまで気づけない私は、やっぱりまだまだ子供なんだ……
「美香?」
「…!」
見つかって、知らない間に滲んでいた涙を焦って拭う。
いちかさんの姿は、もうどこにもない。
突然のことに頭が働くなって……
涙を拭ったあと行き場をなくした手を、誤魔化すようにぎゅっと握っていたら。
その手を掴み、先輩がどこかへ歩き出した。
「ど、どこに行くんですか」
「うち」
「……あの、来ておいて今更ですけど、ごめんなさい。先輩、試験前ですよね…?」
「勉強なら普段ちゃんとしてるし、平気」
そう、なんだ。
先輩の大学すごく頭のいいところなのに……試験前でも慌てないって、やっぱりすごいな。
「つーか今日、何回か電話したんだけど」
「え、うそ……にっしーとご飯食べてて、全然スマホ見てなくて。あの、何か用事だったとか」
「会いたかったの」
「え?」
「…美香に、会いたかった」
「、…」


