「……試験前なのに、ごめんなさい。私、帰ります」
「え…ちょ、美香っ」
先輩が、急くように私の腕を掴んだ。
だけど……足は止まっても、振り向くことは出来ない。
その場所で、痛みに耐えるように顔を伏せた……
「なに、どうした?何かあったならちゃんと話し、」
「大丈夫です、何もありません、」
「は、嘘つくなって。とにかくこっち向っ…」
「ほんとに何もありませんっ……!」
掴まれていた腕を振り払い、零れる寸前の涙を腕で拭った。
それだけで、抑えていた感情が一気に湧き上がってきて……
「……美香、」
「っ……どうして…」
「……」
「どうして私、…何も知らないんですか、…」
「え…?」
「試験が近いことも教員免許のことも、私なにも知らなかった!全部いちかさんから聞かされて、すごく惨めだった…、!」
惨めで悔しくて悲しくて、胸が張り裂けそうだった。
何も知らない自分が、哀れで虚しくて仕方なかった。


