「瞬先輩、章くんと仲良くなったんじゃないんですか?」
「あー……一瞬そんな気もしたけど、やっぱあいつは永遠に俺の敵だな」
「敵…」
「むかつくもん。美香の口から“章くん”って聞くと」
「……」
「つーか俺の知らない美香を知ってる男が気に食わない」
瞬先輩の唇が、機嫌を損ねるようにムッと尖っている。
「…あの、『章くん禁止』っていうのは」
「うん?」
「本気、ですか?」
「……」
もう一度体を持ち上げたけど、視線はまた外された。
「……会いたいの?」
「え?」
「これからも“章くん”に、美香は会いたい?」
「……」
会いたいか、会いたくないかで聞かれると。
「友達だし、章くんには昔からお世話になっているので…」
「……」
「中学のときから親のことでいつも相談に乗ってもらったり、高校を辞めてからも、」
「だからさー」
「、…」
体を持ち上げる私を通り過ぎて、瞬先輩が起き上がった。
スウェットのズボンを履いてTシャツとパーカーを着て、立ち上がった先輩はドアへ歩き出す。