「ちょっ、どこ見て歩いてんの」
「……下」
「なんでだよ、前見て歩けよ」
目が合いそうで、急いで俯いて先輩を越して歩き出す。
のに。
ガシって掴まれた手首に、足が止まった。
「どこ行くの?」
「部屋、です」
「どこの」
「……?」
「部屋、ここ。」
「あ」
部屋についたから先輩が立ち止まったことに、やっと気づく。
「七瀬って、1人で歩かせんの危ねぇな」
「すみません……」
また笑っているから、やっぱり先輩の言う「面白い」は「バカ」で、「可愛い」は「子供」って意味。
……だけど、ねぇ先輩。
私はもう、子供じゃないよ。
ダダをこねたり、わがままを言えるような子供じゃないから。
だから胸の中で思うだけ。
ねぇ先輩。
「どうして彼女がいるの?」って、
思うだけ……


