「章くんには、高校に戻るよう言ったんです。だけどこっちに住んでいるお姉さんのところに間借りするって、一緒に辞めちゃって…」
「……」
「それからは今の書店の仕事を見つけて、働きだしました。最初はもちろん大変だったけど、今は仕事に遣り甲斐も感じています」
暗闇の中、先輩がどんな表情で聞いているのかが見えなくて。
私の言葉がちゃんと伝わっているのか、どういう気持ちでいるのかがわからない。
やっぱりお風呂で話すのは失敗だったなって、そう思いながら、私は……
言葉にするよりももっと確実な方法を考えて、思い切って先輩にぎゅっと抱きついた。
「…美香?」
「元気に、暮らしてました」
「え?」
「高校は辞めちゃったけど、先輩が想像するよりずっと元気に暮らしてました」
「……」
「お店の人たちはみんなすごくいい人だし、贅沢は出来ないけど、どうにかやっていけるお給料はもらっています。だから……だから責任なんて、感じないでください」
「、…」
そこまで言うと先輩は、私の頭にポンっと手を置いた。


