「ご、っつ…先輩、」

「やっぱり七瀬さんだ。全然変わってないね」

「、」


あの頃みたいに眼鏡をかけていて、あの頃みたいに黒髪で、だけどあの頃より大人びて見えるごっつ先輩が、笑ってる。

目の前で、笑ってくれている……


あ、ダメだ……

なんか色んな感情がこみ上げてきて……泣きそう。


「あの…」

「ん?」

「…その節は、生徒会を途中で放棄してしまって、」

「元気だった?」


謝ろうとした私の言葉は、先輩の声にきっとわざとかき消された。


「…元気、でした」

「よかった。元気だったならそれでいいよ」


そう言って微笑みながら、ごっつ先輩は私を追い越し歩きだす。


「瞬の家、こっちだから」

「……はい」


滲む涙を堪えるように、ごっつ先輩の後ろで空を見上げたら……

沈みかけている夕陽に赤く染まった空が、滲んでとてもきれいに見えた。