「なんで、先輩が…」
「え?」
「あ、もしかして熱で記憶ぶっ飛んでる感じ?」
記憶……
なにが正しい記憶なのか、分からない。
「用事あって美香に電話したら先輩が出て、倒れて病院にいるって言われたの」
「そしたら呼んでもないのにこいつすぐ来やがって」
「、…」
ということは本当に、瞬先輩と会ってたってこと?
お店の前で待っていてくれたのは、夢じゃなかったってこと…?
「なんすかその言い方。先輩超テンパってたから助けにきたのに」
「テンパってねーだろ!」
「……」
なんか……2人、仲いいな。
昔はもっと敵対し合ってた気がするんだけど。
「あ、点滴終わったんじゃない?」
「お、じゃあ帰り支度しよーぜ」
点滴が終わって看護師さんを呼んだあと、3人で病院を出た。
体はまだダルいけど、さっきよりは大分ラクで真っ直ぐ歩ける。
点滴パワー、すごいな。
「じゃあ俺帰るわ。美香は先輩に送ってもらいなよ」
「えっ」
「じゃあな」
なんの言葉も出ないうちに、章くんは背中を向けて駅へ歩き出してしまった。
病院前に残されたのは、私と先輩の2人だけ。
どうしよう……今更また、物凄く、緊張。


