「、…」
目の前に来た先輩が、私の右手を何も言わずにぎゅっと握った。
震えてかっこ悪い右手をぎゅっとしたまま、グイって引かれた先は先輩の腕の中……
ぎゅって、人目も気にせずに本気でぎゅって抱き締められるから……
先輩の服を、握り返した。
涙だけが、ただ落ちる。
好きで好きで好きで……どうしたって好きだった先輩の胸の中で、涙が落ちる。
きっと私、あの日、お母さんがいなくなった時と同じくらい、泣いている……
「美香…」
「、…ッ、」
名前を呼ばれただけで、また落ちる。
「…美香」
「、……ッ、…」
声を聞くだけで、また落ちる。
ぎゅっと抱いて私の肩に顔を埋めたまま、先輩が何度も何度も名前を呼ぶから、
涙は全然、止まらない。
掴み合うお互いの手から、ゆっくりと力が抜けていった後、
私の肩を掴んだまま、涙でぐちゃぐちゃな顔を覗き込んだ先輩が、言う。
「…いっぱい話したい」
「、…」
「時間、ある?」
涙を拭って、コクコク何度も頷いた。


