「体育祭の日……あいつを無理矢理家から連れ出したのは、俺です」
「え…」
「正確には、連れ出すように仕向けた。のほうが正しいけど」
「仕向けた?どういうことだよ」
「出てったんです、あいつの母親。体育祭の前日、美香を置いて家を」
「……は?」
頭の中を、カナヅチで殴られたような衝撃が走った。
母親が……出ていった?
「美香はずっと待ってたよ、先輩のこと。母親に捨てられて、泣き喚いて、暴れて、家の中の物を壊しまくって、ケガして、血が出て」
「……」
「先輩は元カノのとこにいるから待ってても来ないって、そう言っても『絶対来る』って、信じてずっと待ってた」
「でも……俺が行ったときには誰もいなかった」
「俺があいつに家から出るように言ったから」
「は、……なんで」
「あの日、美香の足から血が流れてるのを見て、早くここから救い出さなきゃって思った」
「……」
「正確には、こいつを奪うのは今しかないって、そんなことも考えてたけど。で、先輩を待つって言った美香に、俺、なんて言ったと思う?」
「……なんだよ」
「待ってどうすんの?一緒に学校辞めんの?一緒に遠くに行くの?先輩大学行きたいんじゃないの?先輩に負担掛けて、あの人の将来お前が壊すの?好きな人の未来、犠牲にすんの?」
「、」
「最低だろ?」
「っ……」


