次の曲は、まだ入っていない。
飲み物も届いてないし曲も入ってないし、画面の中ではお姉さんがまたアーティストとお喋りをしている。
トイレに行くなら今のうちだなって、ごっつ先輩とにっしーを避けて部屋を出た。
廊下に流れるのは、流行の音楽。
口ずさみながら、『お手洗い』の矢印のほうに歩いていく。
ふんふん鼻歌を歌いながらトイレのドアを開けたら、大きなカラオケ店だけあってその中は思いのほか広かった。
「あー、リップ持ってくればよかった……」
トイレの鏡に映る唇が、乾燥して少し荒れている。
部屋に戻ったらリップを塗ろう。
そう決めて、5分もしないでトイレを出た。
廊下には、さっきと同じように流行の音楽が流れている。
進む足。
止まらない足。
そして。
道に迷う、足……。


