「落ち着いた?」
「はい……」
初めて先輩の家に来て、初めて部屋に入った。
「あの、お家の人は……」
「あー、今日は2人共仕事で遅くなるって言ってた。だから遠慮しないでくつろいでいいから」
「、…」
男子の部屋って感じに適度に汚い先輩の部屋の中で、ベッドを背もたれにして床に座った。
初めての彼氏の部屋の中で、瞬先輩が隣に座る。
それなのに、胸はドキドキすることもなく、ただただ痛い……
ただひたすらに、悲しい。
「あの……迷惑かけて、ごめんなさい」
「……」
「頭の中、ちょっと変になっちゃって、…気づいたら電話しちゃってて」
がんばって笑ってみたけど、先輩が全然笑ってくれないから……
やばい、また泣きそう。
「……ごめんなさい、……ほんとに、ごめんなさい、」
現実が痛くて、苦しくて。
落ちてくる涙に耐えられなくて、隣に座る瞬先輩の胸に自分から顔を埋めた。
泣いても泣いても止まらない涙だけど、先輩の胸の中なら止まる気がして……
だけど背中に回った先輩の手に、涙は止まるどころかどんどん量を増していく。
全然、止まるのとは逆だ。
「ねぇ七瀬……俺に、なにができる?」
俯くように私の首元に顔を埋めた先輩が、悲しそうな声で言う。
「言って?俺、なんでもするから」
「、…」


