別に、緊張するようなことじゃない。
普通に言えばいいだけ。
大丈夫、普通に。
普通に普通に普通に。
「ちょ、すごい土砂降りになってきた」
大丈夫、こんなに土砂降りなんだもん、迷惑がられたりしない。
絶対に喜んでくれるはず。
だから絶対、大丈、
「美香?」
「、…」
……呼ばれた名前に、先輩と同時に振り向いたら。
そこにいたのは、中学校からずっと一緒で、今も同じクラスの章くんだ。
「なに、今帰り?」
「あ、うん」
「ふーん」
ふーんって言いながら、章くんの視線は私の隣にいる先輩を見てる。
まるで品定めをするみたいに、じっと……
「……」
「……」
「、…」
謎の沈黙の中、雨の音だけが大きく響く。
玄関に響く雨音は、どんどん激しさを増していくみたいで……なんだか煩い。