「えー、なに、もう戻んのー?」
むかつくから、先輩の声なんて聞こえないフリ。
「つーか、彼女なってくんねぇのー?」
「………」
「無視っすかー?七瀬さーん」
「………」
歩く私の後ろから、瞬先輩がついて来る。
笑われてムカムカしたままの私は、更に無視を続行。
「七瀬ー」
「………」
「なーなせー」
「………」
「美香さーーん」
「………」
「美香ー」
「、…」
なん、なの……
私やっぱり、ただからかわれてるだけ?
だって……名前を呼ばれるだけで泣きそうになるの、私のほうだけじゃん。
笑われたのがむかつくとか言って、こんな風に緊張を誤魔化さないと震えるのだって、私だけじゃん。
そんな風に余裕でいられる先輩の彼女なんて、私……
「お?」
足を止めて、後ろにいる先輩のほうに振り向いた。
それに気づいた先輩の足も止まって……私たちは、向かい合わせになってお互いを見る。


