「なんで、ねぇなんで私なの!?」

「なんでって、あんた推薦されて演説してたでしょ。ほらあの変な演説。『どうか私に清き1票を入れないでください…!』って必死に言ってたよね」

「そうだよ、だってやる気なんてまったくなかったから……!」

「それだよそれ。他の女子たちはさ、動機が不純ぽかったじゃん。美香があの先輩に興味ないって感じだったから票が集まったんじゃない?」

「なにそれ詐欺、ハメられた、集団いじめだ……!」

「にゃはは、いじめてねぇっつーの」



ことの始まりは先日開かれた旭ヶ丘高校第61期生徒会選挙。


“あの先輩”を目当てにした立候補者が後を絶たない中、どうしてかうちのクラスからは誰1人として立候補者が出なかった。


各クラス最低1人は選出!という傲慢な決まりに逆らえなくて、字がキレイという理由だけで推薦されて、緊張で震えながら演説して、もはや選挙のことなんて忘れて過ごしたこの1週間。



蓋を開けたらまさかの当選なんて……ありえない!