私の手首を掴む、大きな手。
私を引っ張る、筋張った腕。
揺れる黒い髪の毛も、
目の前のグレーの背中も、
全部……全部もう、誰かのものじゃないんだって、思ったら……
やっぱりこんなの、嬉しすぎる。
人の不幸を喜ぶ私は、最低かな……
こんな私、やっぱりバチが当たるかな…?
「靴履き替えて待ってて。迎えに来るから」
「…はい」
連れて来られた玄関で、私は2年の下駄箱で靴を履き替える。
3年生の下駄箱に向かった先輩を見送ったあと、その場所に座り込んで先輩を待った。
「……」
ドキドキしてきた。
今更……ほんとに今更。
だってこれから、どこ行くの?
2人でサボるってことは、今からずっと2人でいるの?
急にそんな、生徒会の仕事以外で一緒に過ごす、なんてこと……
どうしよう、私……男子と放課後に2人だけで、学校以外で過ごしたことない。
「あ、違う……章くんとはたまにあったかな」
「なに、“章くん”がどうかした?」
「!」
ボーっと考え込んでいる私の真横に、靴を履き替えた先輩が立っていて……
慌てて立ち上がって「なんでもないです」って言ったら、声がひっくり返りそうになった。


