この学校に入学して、まだ1年。
たった1年なのに、自分の入学式の事なんてあんまり覚えてない。
緊張してたんだろうなって思うけど、それすらもあんまり。
写真もないし、お祝いだってなにもしてないから。
覚えているのは、1つだけ。
お母さんもお父さんも来てくれなかったって事だけ。
そんな事を思い出していたら、また無意識にため息が出ていた。
「七瀬、ため息」
「あ、ごめんなさい」
入学式が続く静かな会場で、大きなため息を吐いてしまった。
ヤバ、って思って、もうため息がでないように唇に力を入れる。
「やっぱなんかあった?」
「え?」
「家のこと?」
「、…」
そっかって、思った。
先輩は家の事をもう知っているから、それでため息を気にしてくれているんだって。
「違います、ただの意味のないため息です」
「ほんとに?」
「家は相変わらずですけど……特に変わりはないので、大丈夫です」
「そっか」
「はい」
もう高校2年生になったんだから、親のことで泣いたり悩んだりしない。
私はもう、そこまで子供じゃないはずだから……


